大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)69号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願考案につき、出願から審決の成立及びその謄本送達にいたる特許庁における手続の経緯、その考案の要旨並びに審決の理由の要点に関する事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決の取消事由の有無について判断する。

原告は、本願考案の出願当時、映画撮影用フイルムの技術分野において「8ミリ映画撮影用フイルム」といえば、当然、撮影前半には縦半分の8ミリ幅を感光させ、次に、このフイルムの装入器を反転し、残り縦半分の8ミリ幅を感光させるという往復(ダブル)方式に供される16ミリ幅のフイルムを指称することが周知であつたと主張するが、甲第一、二号証の各一ないし三によつても、さような事実を肯認することができず、他に、これを認めるに足りる証拠はないのみならず、成立に争いのない右甲号各証を総合すれば、むしろ、小型映画撮影の業界においては、米国のイーストマン・コダツク社が、大正十二年16ミリ映画を発表し、昭和七年には8ミリ映画を発表したが、これは16ミリ幅のフイルムを使用し、はじめに片側の半分幅を撮影し、次にスプールを裏返して反対側の半分幅を撮影し、その現像後、フイルムを縦に二分したうえ、接合して8ミリ幅、五十フイートの一巻のフイルムに仕上げる方法によるものであつて、わが国においても、同年中、渡来して一般に普及するにいたつたこと、その後、イーストマン・コダツク社は、昭和三十九年8ミリ幅、五十フイートのフイルムを使用する「スーパー8方式」を開発するとともに、世界の主要なフイルムメーカー等に協力を求め、これに対し、富士フイルムは、昭和四十年四月8ミリ幅のフイルムを使用しながら、「スーパー8」とは形態の異なる「シングル8」を発売したので、8ミリ映画撮影の業界においては、8ミリ映画として「ダブル8」(16ミリ幅のフイルムの往復使用)のほか、「スーパー8」(8ミリ幅のフイルム使用)及び「シングル8」(8ミリ幅のフイルム使用)の方式のものが知られるにいたり、本願出願当時(昭和四十年三月二十五日)でも、「ダブル8」及び「スーパー8」の両方式のものは既に知られ、したがつて、映画撮影用フイルムの技術分野においては、「8ミリ映画撮影用フイルム」といつても、当然に往復方式の16ミリ幅のフイルムのみを指称する状況になかつたことを窺い知ることができるのである。

してみると、本願考案の登録請求の範囲にケースに収納するものとして記載されている「8ミリ映画撮影用フイルム」の文言から、本願考案が16ミリ幅のフイルムを使用する往復方式の構成をとつていると解すべきであるという原告の主張は根拠がないこととなるから、右主張の点を前提として本願考案が引用例のものと構成上差異があるとし、これを看過誤認して、本願考案の登録を拒絶すべきものとした本件審決は違法であるという原告の主張は理由がないものというほかない。

三 よつて、右主張のような違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

第一 当事者の求めた裁判

原告は、「特許庁が、昭和四十八年一月三十一日、同庁昭和四二年審判第九、二〇三号事件についてした審決は、取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人は、主文第一項同旨の判決を求めた。

第二 請求の原因

原告は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

(審決の成立―特許庁における手続の経緯)

一 原告は、名称を「映画撮影用フイルムのコンビネーシヨンケース」とする考案につき、昭和四十年三月二十五日実用新案登録出願をしたが、昭和四十二年十一月二日拒絶査定を受けたので、同年十二月三十日審判の請求をしたところ、特許庁は、これを同年審判第九、二〇三号事件として審理し、昭和四十八年一月三十一日「本件審判の請求は、成り立たない。」との本訴請求の趣旨掲記の審決をし、その謄本は、同年五月二十三日原告に送達された。

(考案の要旨)

二 本願考案の要旨は、次のとおりである。

プラスチツク製環状周側胴の両側開口部をそれぞれ密閉する円板の中心に管軸を回動可能、かつ、遮光密封状にもうけ、前記周側胴にフイルム出入口を設けた別個のフイルム供給ケース及びフイルム巻取ケースと、両ケースを連結する係脱自在な連結板とから構成される8ミリ映画撮影用フイルムのコンビネーシヨンケース。

(審決の理由の要点)

三 そして、右審決は、次のように要約される理由を示している。

本願考案の要旨は、前項どおりに認められるが、特許第一〇五、二五四号明細書の第二図ないし第十図及びそれらの説明(以下、「引用例」という。)には、「金属製環状胴殻の突縁と金属製環状蓋殻のボスとの間に巻管を回動可能、かつ、遮光密封状にもうけ、前記両殻にフイルム出入口をもうけた別個のフイルム供給ケース及びフイルム巻取ケースと、両ケースを連結する係脱自在なバヨネツト式の支持板とから構成される映画撮影用フイルムのコンビネーシヨンケース」が記載され、これと本願考案とを対比すると、(1)両ケースの連結構造が、本願考案においては単なる連結板によつているのに対し、引用例においてはバヨネツト式の支持板によつている点、(2)ケースの材質が、本願考案においてはプラスチツクであるのに対し、引用例においては金属である点、(3)映画撮影機の型が、本願考案においては8ミリであるのに対し、引用例においては特定されていない点で相違し、その他の構成では一致する。しかも、右相違にかかる本願考案の(1)の点は、引用例のものと、その効果に格別な差異がないから、単なる構造上の微差にすぎず、(2)の点は、種々の写真映画用機械器具の材質をプラスチツクとすることが慣用技術に属するから、単なる材料の変換にすぎず、また、(3)の点は、シングル、ダブル、いずれの方式のフイルムも使用可能の8ミリ映画撮影機が周知技術に属するから、映画撮影機の型を単に周知技術の8ミリに特定したにすぎず、結局、いずれも、その構成に格別考案力を要するものと認めることができないから、本願考案は、引用例に記載された考案に基づいて当業技術者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができない。

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